中小企業の事業承継、後継者問題を考える
DORオプション調査「事業承継」より

 7~9月期の同友会景況調査(DOR)では、オプションとして「事業承継」問題について聞きました。スペースの関係で多くの質問ができなかったにもかかわらず、その結果からは、現在中小企業が抱える「事業承継」問題について示唆するところは少なくありませんでした。調査結果の概要を紹介します。

後継者をすでに決定は45%
そのうち親族内継承は75%

 今回のオプション調査は、設問項目が6項目というきわめて限られた内容であったにもかかわらず、さまざまな情報を与えてくれました。順を追ってみてみます。

経営者の経営経験年数

 経営者の経営経験年数について、6つのカテゴリーにわけてみると、20年以上30年未満層が24.0%と最も多くなっています。10年以上20年未満(22.9%)と30年以上40年未満(21.4%)を合わせると、約68%となります(図1)。

DOR80号オプション調査図表1

 ちなみに、今回回答した経営者の平均経営経験年数は20・8年でした。なお中央値は20.0年、平均値より1年ほど経験年数が短くなっています。回答者に同友会の役員層が多いせいか、ベテラン経営者が多いといえます。

経営者の年齢

 これも6つのカテゴリーにわけてみます。最も多い年代は50歳代の経営者で39.4%を占めます。続いて60歳代の経営者が33.8%と、この2つの世代で7割強を占めることになります(図2)。

DOR80号オプション調査図表2

 経営者の平均年齢は57.3歳、中央値は58.0歳と、平均より少し高年齢のところにあります。全体として経営者の高齢化が目立つといえるでしょう。

後継者の決定状況

 後継者が調査時点で「すでに決まっている」と回答したものは45.2%となりました。「いまだ決めるべき時期ではない」が29.7%。しかし「決める時期にきているが決まっていない」も21.5%あり、決して少ない比率ではありません。さらに「一代限り(後継者不要)と考えている」というものも2.3%あります(図3)。

DOR80号オプション調査図表3

 これは、廃業を予定しているということでしょうか。1人でやっている士業などもこの中に入りますが、なかには正規従業員35名の農業経営者や、従業員11人を抱える道路舗装業者も廃業を考えているなど、考えさせられる問題も多いようです。

後継者はだれか

 すでに後継者が決まっていると回答した経営者に聞いています。後継者が決まっている企業のうち、「子ども」は63.6%、「子ども以外の身内」が11.4%と、親族内継承は75%を占めます(図4)。

DOR80号オプション調査図表4

 「役員・従業員」(24.0%)も決して少ない比率ではありません。「社外の人物」(1.0%)と合わせ、親族外継承も25%を占めています。近年の経営者の後継問題での意識の変化の一端が表れています。

後継者が決まらない理由

 後継者が決まらない理由を、後継者が決まっていない経営者に聞いています。

 「適任者がいない」が62.5%と大半を占めていますが、具体的に後継者と決めても「適任者が応じない」も6.8%います(図5)。「その他」が30・7%いるということは、このほかにも決まらない理由は多岐にわたっていることを示しています。

DOR80号オプション調査図表5

後継者が見つからなかった場合の対応

 後継者が見つからない場合も想定できます。その場合はどうするのか。「可能なら譲渡・売却したい」は55.7%、「廃業する」は9.0%に及びます(図6)。

DOR80号オプション調査図表6

 「その他」ではどのようなことが見通されているのでしょうか。35.3%の層がどんなことを計画しているのか、さらに探ることも必要かもしれません。後継者が見つからない場合「譲渡・売却したい」という回答が5割超あるということは、M&A(合併と買収)に対する抵抗感が弱くなってきたことを示すものともいえます。

事業承継の際に想定される問題

 「事業承継の際に想定される問題」については、すべての回答者に、上位3つまでの複数回答を求めています。

 トップが「後継者の力量」で、80.2%に上ります。続いて「事業の将来性」が64.6%で、この2つがトップグループを形成します(図7)。2番目のグループは「取引先の信頼維持」35.1%、「借入の個人保証」26.9%が上がっています。3番目のグループに「個人資産の取り扱い」13.5%、「候補者の不在」13.3%、「社員の不平・不満」10.6%が挙げられています。

DOR80号オプション調査図表7

「中小企業家しんぶん」 2007年12月 5日号より